教え上手

しかし、そのおかげで教え上手になれたと思っています。自分ができない経験をしてきたので、できない人の気持ちも分かりますし、なぜできないのかも分かります。例えば、施術で「指先を寝かせて、優しく丸く円を描くように指を動かす」と指導しても、力を入れて指を立たせてしまう人もいます。また、言葉で説明しても、「指を寝かせる」ということが分からない人もいます。そんな時も、自分が失敗が多かったからこそ、「力を入れると指先が立ちます」と前以て話すことができます。そうすると、生徒は力を抜いたら良いということが分かるのです。私は、各地のサロンを回って、社員にエステテイツクをしてもらうことがあります。もちろんお金も払います。その時に「力を入れ過ぎている」とか、で」れは第一関節を曲げたらいいだけなのよ」とか、「そこの場所じやない、ここ」とか、ちょつとしたコツをアドバイスします。できない人へは、手をとつて指導することもあります。その後、社員はお客様から「上手くなったね」と誉めてもらえるようです。社員が突き当たってしまう壁には、私も全部突き当たつてきましたから、そのお陰で教え上手になれたのかもしれません。

 

美容室で美顔を教えながら、自分の美顔サロンを持てたらいいなあと漠然と考えていた頃、私はエステテイックサロンに通っていました。24歳の頃のことです。そこで働く若いエステテイシャン達はお客様をきれいにしたいと一生懸命に施術していました。私は自分よりも若い人達が一生懸命働いていることに感動していました。エステは人の体を触り、会話も多い職業ですから、人間好きの気のいいエステティシャンが働いていました。しかし、エステテイシャン達は「なぜこの人にこの施術をするのか」「なぜこの肌にこの化粧品を使うのか」など、理論的なことが分かっていません。私が質問してもなかなか的確な答えは返ってきませんでした。エステテイシャン達はすごく一生懸命で、汗をいつぱいかいて、私をきれいにしてくれようとします。 一生懸命笑って、 一生懸命しやべつて、 一生懸命施術をしてくれる。 一生懸命お客様にきれいになってもらいたいと思っているけれど、彼女達は皮膚の構造や化粧品の成分についても、知識を持っていませんでした。